「76歳のA子さん、数年前から膝のやや内側が痛む。膝の裏の引きつりを伴うことが多い。夕方になると足の裏が浮腫んだような感覚になる。痛みは、冷えや疲労で悪化しやすい。やや疲れやすく、時に腰痛もあり。食欲正常で温かいものを好む。血糖値が少し高い。」とのこと。
腎陽虚水泛証に陰陽両虚証を兼ねていると考え、牛車腎気丸と桂枝加芍薬湯を併用することにしました。また、填精補髄により、骨や関節をしっかりさせるために瓊玉膏を併用しました。1ヶ月ほどで痛みが軽減し、歩くのが楽になってきたとのこと。服用していると体調も良いとのことで現在も服用中です。
漢方では筋・筋肉・骨関節などの部位の疼痛、腫脹、しびれなどを主症状とする病証を痹証(ひしょう)といい、現代医学の関節リウマチ、神経痛、変形性膝関節症、痛風などに当たります。
痹証の漢方治療は、まず痛む部位、痛みの状態、患部の色、変形などの有無、悪化条件、好転条件などを明確にして、それらを手がかりに痹証のパターンをきちんと分類していきます。環境の変化によって悪化する「風痹」「寒痹」「湿痹」「熱痹」、血や水液の流れが悪いために生じる「瘀血痹阻」「痰湿阻絡」「痰瘀阻絡」、ストレスが原因となる「肝気鬱結」、気力、体力の消耗による「気血両虚」「陽虚」「陰虚」「陰陽両虚」、その他多くのパターンが考えられます。
いくつかのパターンが、複雑に混在していることが多く、きちんと判別することが治療のカギとなります。