月経前症候群(PMS)は日本産科婦人科学会用語解説集では、「月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの。」と定義されています。欧米の診断基準では、主な精神症状として、抑鬱、怒りの爆発、イライラ、不安感、判断力の低下、社会的引きこもりなど、身体症状としては、乳房痛、腹部膨満、頭痛、四肢の浮腫などが挙げられています。
東洋医学では、月経前に限らず、月経周期に伴って現れる諸症状を「月経前後諸症」としています。中でも、精神症状が主の場合を「経行情志異常」といいます。
「39才のAさん。排卵後くらいから月経前までイライラが強い。また月経前に頭痛や耳鳴がする。頭痛はこめかみのあたりの脹痛や重痛が多い。月経前に足が浮腫む。月経が始まると諸症状はなくなる。普段から胃の調子が悪く、やせ形で貧血気味。月経周期は30日で安定している。」とのこと。脾胃虚弱による気血の生成不足から肝の陰血が不足し、疏泄失調から肝気鬱結や肝火上炎を引き起こしていると考え、丹梔逍遙散と香砂六君子湯を服用していただくことにしました。2週間ほどで胃の調子が良くなり、4週間後に来局されたときは、経前のイライラや頭痛も軽度になりました。現在3ヶ月ほど服用していただいていますが、経前の不調はみられず、お元気そうです。
中医婦科学では、「月経前後諸症」において、「経行情志異常」を始め、「経行発熱」「経行頭痛」「経行身痛」「経行泄瀉」「経行吐衄」「経行口糜」「経行風疹塊」「経行眩暈」「経行浮腫」…などの病症を挙げています。それらをさらに証候別に分類し、それに応じた漢方処方が控えています。自己判断ではなく、漢方薬を専門に扱っている所に相談して服用することが大切です。漢方薬を上手に使って、月経時もスッキリ、快適に過ごしましょう。