202「疲労で悪化するアトピー性皮膚炎」
西洋医学では、アトピー性皮膚炎は、バリア機能・生理機能が低下した皮膚が、外側からの刺激を受けて発症するとされています。これを漢方的に解釈すると、人体の抗病能力である正気(気・血・
津液・精など)の不足に、外部環境の変化、飲食の不摂生、ストレス、過労などの誘因・増悪因子が加わることにより
生じると考えられます。ここで、漢方治療のために大切なのは、外側からの刺激を防ぐことよりも、抗病能力である正気を充実させることです。
過労や睡眠不足などで、正気を消耗し、アトピー性皮膚炎が悪化するケースは、多く見られます。
「
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才のA子さん。幼少期に
アトピー性皮膚炎を発症。成長と共に落ち着いていたが、
社会人になり、過労で悪化。顔
や上半身に多く、患部は淡紅色で、乾燥、痒み、落屑、血痂、肥厚がみられる。疲労や睡眠不足、月経中などにひどくなり
やすい。」とのこと。気血両虚と判断し、八珍湯と瓊玉膏を服用していただくことにして、できる範囲で、
しっかり睡眠をとってもらう
ようにしました。30
日ほどで効果が見え始め、悪化、好転を繰り返しましたが、その後ほとんど症状が
なくなり、現在は痒みもなく、 皮膚もカサカサしていません。
表情も明るく、とても、お元気そうです。漢方治療では、痒み、赤み、乾
燥、鱗屑、痂皮、あるいは湿潤
などの不快な症状が顕著な段階では、まず、それに対処し
ますが、症状が緩解してきたら、正気を補う治療に切り替えていきます。その結果、皮膚
のバリア機能・生理機能を高めることになり、外側からの刺激に負けない皮膚を作っ
ていきます治療には、段階や症状、悪化要因などに合わせた臨機応変で、細やかな対応が必要となります。他の疾患同様、きちんと漢方的に分類し、処方を決定することが治療の早道となります